電話とトンカツ

さて、その最初のほうに、日本側の情報収集の一環として、中国大使館で使われている、ある書類を手に入れるシーンが出てくる。その表紙には「分机申活簿」と記されているという……。
何か秘密の暗号だろうか。しかし、どうも、字面の雰囲気がどこかで見たような。……もしかして、それは、「分機電話簿」(内線番号リスト)では……?
中国では、「電話」は下のような文字になる。いうまでもないが、「電」と「話」の簡体字であって、「申」や「活」とは関係がない。

中国の企業が、日本向けに作った商品のパッケージで、日本の新字体に似た文字を、無理やり中国の簡体字から選んであてはめた例は時々あるが、これはその逆のケース? もしかすると、くだんの書類は、実は中国大使館から失敬したものではなくて、日本人が捏造したというオチがあるとか……一応シリアスそうな小説なので、それはちょっと無理がある気がする。製版の過程で起きた珍現象なのだろうか。今読んでいるのは単行本を文庫化したものなのだが。それとも、何か深い意味があるのだろうか。最後まで読めばわかるかもしれないが、かなり根気がいりそうだ。とにかく、意表をついた表記である。
「申活」で検索してみると、「携帯申活」などが結構でてくる。Webの場合、わざとやっているものもありそうだ。また、OCR のしわざもあるかと思ったので、試しに、上の「電話」の簡体字の画像を、中文に対応していない OCRソフトに渡してみた。結果は、「屯活」。
そこで、今度はこれを Google で検索すると、こちらもかなり出てくる。ただし、検索結果に並んでいるのは、ほとんどが PDFファイル。検索結果ページには「打来的屯活」などと表示されているが、実際の PDFファイルの中は、正しい簡体字になっている。これは Google の PDFファイル検索にかかわる問題のようだ。
「とんかつの屯活」というのもあったが、これは、金沢市にあるとんかつ店の名前だった。
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